ジムでスクワットをする際、「膝をつま先より出さない」と指導されます。
これは常識のように語られ、それができていないトレーニーに対しては、膝が前に出ないように壁につま先をつけた上体でスクワットをして矯正したりするトレーナーもいます。
しかし、結論として膝の位置ばかりを意識する必要はありません。
「膝をつま先より前に出さない」ことだけを意識してトレーニングをすると非常に限られた制約の中でのトレーニングとなってしまいます。
バーベルを担いで行うスクワットでは、正しいフォームを身につけずに、膝をつま先の後ろの位置にしようとばかり意識をすると、後ろにひっくり返りそうになり危険です。
「そこは腹筋で耐えます。」「ですのでスクワットをする為には腹筋も必要になるのです」というと説明するジムのトレーナーもいると聞きますが、これも誤りです。
原理的にバーベルのような高重量のものを担いで、そのまま膝を曲げると後ろに倒れるようになっているのです。
それでは、どのようなスクワットを行えばよいのでしょうか。
膝ばかりに意識がいくと、逆に上体をたてままましゃがもうとしてしまいがちですので、まずは膝よりもお尻を意識して下さい。
お尻をブリッと後ろに突き出す動きでしゃがみます。そうすると自然に上体が傾き、必然的に膝がつま先の上付近にくるようになります。
「膝がつま先より出てはいけない」ばかりを意識してスクワットをして、違和感を感じていらっしゃる方は膝よりもお尻に意識して、そして足の裏のどこに体重が乗っているかを感じて下さい。つま先に体重が乗ると膝が前に出てしまいます。
つまり重心の位置が悪いと、結果的に膝が前に出ることで膝に負担がかかり傷害のリスクがあるということです。
じつは究極的には誤ったフォームというものは存在しません。
なぜなら膝伸展筋を鍛えるためにあえて、膝を目いっぱい前にだすフロントスクワットという種目も存在します。
もちろん、怪我のリスクを減らすのは一番に優先すべきことです、それだけにとらわれるとトレーニングの内容が限られてきます。
このことはすべてのトレーニング種目に共通します。
正しいフォームとはトレーニングの目的や、個々の体の状態によって異なります。教科書的なフォームだけに捉われる必要はありません。上達具合に伴い怪我に気をつけながらトレーニング種目のバリエーションを増やしてみる、そして今日は違和感を感じるなと思ったら無理してトレーニングをしないなど、自分で試行錯誤しながら進めていく姿勢も必要です。
ハコジム エグゼクティブトレーナー。パーソナルトレーナー養成校HUB校長。国家資格 柔道整復師。後進のトレーナーを教育する傍ら、自らも現場に立ち指導に取り組んでいる。