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ピラティスとメンタルヘルス

 体幹を鍛えるトレーニング、スタイルアップを目指すエクササイズなどとして一般的に認知されているピラティス。そんなピラティスですが、単なる身体のトレーニングとしてだけでなく、実はメンタル(精神)ケアとしての特性も持ち、メンタル面を整える効果もあることをご存じでしょうか。実際にアメリカでは、ピラティスをメンタルケアの方法として捉えている専門家も少なくはありません。今回は、ピラティスにおけるメンタル面でのアプローチについて説明していきます。

目次
1 ピラティスの理念「コントロロジー」
1.1 「コントロロジー」とは
1.2 心と身体は一体
2 ピラティスにおける、メンタル面での好影響
2.1 胸式呼吸
2.2 集中
2.3 身体の調整と自律神経の調整
2.4 身体の変化を感じる
まとめ

1 ピラティスの理念「コントロロジー」

1.1 「コントロロジー」とは

 ピラティスの創始者であるジョセフ・ピラティス氏は、自らが考案したピラティスメソッドのことを「コントロロジー」と名付けました。これには、「コントロールする学問」という意味合いがあり、「心と身体は一体であり、自身の身体そして精神(心)を認識しコントロールすることによって、心身共に健康でより良い生活を送り、ニュートラルな状態に導く」ということを目的とした、ピラティス氏の理念によるものです。
 ピラティスのエクササイズにおいて、身体が一番安定する位置を「ニュートラルポジション」といいますが、精神的にもこのニュートラルポジションを目指すのがピラティスの目的です。
 元々は戦時中の負傷兵のリハビリとして行われていたのがピラティスの原点です。収容所で寝たきりの兵士たちは、身体だけでなく、精神的にも大きな打撃を受けていたでしょう。そんな彼らに、身体面・精神面の双方をより良い方向へと導く方法となったのが、現在はピラティスと呼ばれる「コントロロジー」なのです。

1.2 心と身体は一体

 「病は気から」と、昔からよくいわれます。また、仏教用語で「心身一如」という言葉もあります。
 これらは、コントロロジーの考えとも共通し、精神と身体は繋がっており、常に影響し合っているということです。
 身体が整えば心も安定する、先述の通り、身体と精神をニュートラルな状態へとアプローチさせることが、ピラティスの目的なのです。

2 ピラティスにおける、メンタル面での好影響

 それでは、ここからはピラティスがどのようにメンタル面にアプローチしていくのかを説明していきましょう。

2.1 胸式呼吸

 ピラティスで行う胸式呼吸では、脳にたくさんの酸素を送り込み活性化させる効果があります。これによって、ピラティスをすると頭がすっきりとした爽快感、やり切ったというような達成感や充実感などを覚え、ストレスやイライラなどを緩和することが期待できます。

2.2 集中

 例えば、悩みごとや嫌なことがあるとき、そのことをあまり考えないようにしようとすると、かえって気になってしまい悪循環になってしまう…ということはありませんか。そういうとき、何か他のことに意識を向けてしまうことが良い対処法なのですが、ピラティスはまさにそれに適しているのです。
 ピラティスを行っているときは、常に自身の身体を意識します。今、身体のどの部分がどのように動いているのか、というように、自身の身体に集中し、他のことを考えることができなくなるのです。
 他のことは考えず、ただ自身の身体にだけ集中する時間を持つことができる、これもピラティスの利点の一つです。

2.3 身体の調整と自律神経の調整

 自律神経は身体のバランスと密接しており、姿勢の崩れ、身体の歪みなどは、自律神経のバランスを崩す原因となります。先に、心と身体は一体ということについて述べましたが、自律神経がまさに精神と身体のバランスを担う重要な役割を担っています。そのため、どちらかに不調が起こると、もう一方にも影響を及ぼすのです。
 ピラティスは、身体のバランスを整え、より良い状態へと導くエクササイズです。身体のバランスを整えることで自律神経も正常に働き、精神的な安定を導くことができます。
 少しイメージしてみて下さい。悩みごと、嫌なことを考えているとき、視線は下向きになり、背中が丸く猫背になっていませんか。視線を真っ直ぐ前に向け、背筋を伸ばすと、気持ちも前を向こうと、前に進もうという気になってきませんか。
 ピラティスで身体を整えていくことが、自然と精神を整える働きもしているのです。

2.4 身体の変化を感じる

 ピラティスの効果には即効性があります。
 ピラティスのトレーニング前後に身体の状態をチェックしてみると、ピラティス後は例えば、足裏でしっかりと踏んで立っている、身長が少し伸びたような気がする、などの身体の変化を感じることができます。
 これによって、「やればできる」というポジティブな思考、「もっと頑張ろう」という前向きな姿勢になります。
 子供の頃は、できなかったことができるようになり、それを喜ぶことが多くありますが、成人するとそういった機会は少なくなります。
 ピラティスによって、子供の頃に感じた喜びを味わうのも、生活の中での良い刺激となるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。
ピラティスは、単なる身体のトレーニングではなく、身体と精神の総合的な健康を目指すエクササイズです。
 現代社会はストレスが絶えないといわれています。特に今年はコロナ禍の長期化によって、生活や環境の変化によるストレスも多く、先の見えない不安に落ち着かない心情で毎日を送っている、という人は少なくはありません。
 ピラティスが生まれたのも、第一次世界大戦中、さらにスペイン風邪が世界的に流行するという、激動の時代でした。
 今も同じように、コロナウィルスの大流行による激動の時代です。ピラティスで心身共の健康を目指し、この時代を乗り切っていきましょう