スムーズなダイエットを行うためには、筋力トレーニングはたいへん重要です。しかし、やり方を間違うと、しっかり体脂肪を落とせないだけでなく、ボディラインが崩れかねません。
そこで今回は、効果的なダイエットを行うためのトレーニング方法やセットの組み方について解説していきます。
ダイエットは基礎代謝と深く関わりがあります。そのため、まずは基礎代謝とダイエットの関係性や基礎代謝を上げる方法、シェイプアップに必要な筋肉を鍛える重要性について説明します。
基礎代謝とは、生命活動に必要なエネルギーを消費することを言います。安静時でも消費し、また基礎代謝量が多くなるほどカロリーの消費量も多くなるため、基礎代謝を上げることはダイエットに効果的です。
基礎代謝量は、全身の中で骨格筋が22%ともっとも多く、次いで肝臓21%、脳20%、心臓9%と続きます。
効率的にダイエットを行うためには、基礎代謝の割合が多い部位の基礎代謝量を増やせばよいことになります。しかし、ここで問題があります。それは、内臓はほとんどコントロールできないこと。
そのため、コントロールしやすい骨格筋、つまり筋肉で基礎代謝を調整することが、ダイエットのためにはもっとも効果的と言えるのです。
基礎代謝を上げるためには、筋肉量を増やすことが重要です。そうすることで、全身の基礎代謝の22%を占める骨格筋での代謝量を増やすことができるためです。
だからといって、ただ単に筋力トレーニングをすればよいわけではありません。ダイエットに適した方法でトレーニングすることで、効率的に基礎代謝を上げることができます。
その方法とは、まずは鍛えるべき部位を理解することです。全身の中で大きな筋肉を持つ部位の筋肉量を増やすとよいでしょう。たとえば、太ももにある大腿四頭筋やハムストリング、背中にある広背筋、胸の大胸筋などです。
次に、実践するトレーニング種目も大切です。筋肉量を増やすための種目を行わなければ、基礎代謝量はスムーズに増えません。また、適したトレーニングを行っても、フォームが崩れていると狙った部位の筋肉量増加が見込めないため注意してください。
そして、適切な負荷でトレーニングすることです。1セットあたり5回で限界がくる負荷と20回で限界がくる負荷では、筋肉への刺激も変わってきます。ダイエット目的の場合は、低い負荷で高回数行うことが基本です。
ダイエットでは、基礎代謝アップで痩せやすい体をつくることに加え、シェイプアップに必要な筋肉を鍛えることも重要です。
いくら基礎代謝が高くても、スタイルの見え方は人それぞれです。基礎代謝を上げるとともに気になるパーツを鍛えることは大切です。ウエストや二の腕など、気になる部位は人それぞれでしょう。これらの部位に脂肪燃焼に必要なホルモンを届けたり、筋肉を引き締めて理想のラインにしたりすることが大切です。
ここでも、基礎代謝を上げるトレーニングと同様に、適切なフォームや負荷を設定することがポイントです。
続いて、ダイエット目的の場合に実践したいトレーニング種目と鍛える筋肉について説明します。
基礎代謝の多い筋肉は、胸や背中、太ももなどにある大きな筋肉です。トレーニング種目と鍛えられる筋肉は次のようになります。
ベンチプレス(大胸筋、上腕三頭筋、三角筋)
ダンベルフライ(大胸筋)
ダンベルプルオーバー(大胸筋、広背筋)
デッドリフト(脊柱起立筋、 大殿筋 )
ベントオーバーローイング(広背筋、僧帽筋、上腕二頭筋、三角筋)
バックエクステンション(脊柱起立筋、 大殿筋 )
スクワット(大腿四頭筋、大腿二頭筋、脊柱起立筋、大殿筋)
フロントスクワット(大腿四頭筋、 大殿筋 )
ランジ(大腿四頭筋、 大殿筋 )
シェイプアップのための筋肉とトレーニング種目の一覧です。引き締めたい部位とトレーニング種目、そして具体的な筋肉の名称は次のようになります。
クランチ(腹直筋)
シットアップ(腹直筋、腹斜筋)
サイドベント(腹斜筋)
レッグレイズ(腹直筋下部、腸腰筋)
トライセプス・エクステンション(上腕三頭筋)
トライセプス・キックバック(上腕三頭筋)
リバース・プッシュアップ(上腕三頭筋)
ショルダープレス(三角筋、僧帽筋、上腕三頭筋)
フロントレイズ(三角筋)
サイドレイズ(三角筋)
リアレイズ(三角筋)
ワイドスタンス・スクワット(内転筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋)
サイドランジ(内転筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋)
アダクション(内転筋)
ヒップエクステンション(大臀筋、大腿二頭筋)
ヒップリフト(大臀筋、広背筋、腹直筋)
ブルガリアン・スクワット(大臀筋、内転筋)
なお、基礎代謝アップとシェイプアップのトレーニング種目が重なることもあります。たとえば、太ももやお尻に効かせることができる、ランジやスクワットなどです。
最後に、具体的なトレーニング方法について説明します。
ダイエット目的のトレーニングでは、バーベルやダンベルを使ったフリーウエイトトレーニングがおすすめです。いずれも、器具を使って自分の体重以外の負荷を与えることができるトレーニングです。
しかし、同じフリーウエイトでも、バーベルとダンベルとでは筋肉への刺激が異なります。この違いを利用することで、スムーズなダイエットができます。
まず、バーベルは、シャフト(長い鉄の棒)の両端にプレート(重り)がついたトレーニング器具です。安定して取り扱えるため、より高い負荷をかけることができる特徴があります。フォームも崩れにくいため、しっかり筋肉量を増やすトレーニングに適した器具と言えるでしょう。
次に、ダンベルは、シャフトが短く片手で扱うトレーニング器具です。軽めのウエイトにすれば、シェイプアップしたい筋肉を狙いやすいでしょう。
一方、フォームの崩れやすい種目を行ったり重量が増えたりすると、不安定になりやすいため注意が必要です。この場合、フォームを安定させるために狙った筋肉以外の筋肉を使うことから、複数の筋肉を同時に鍛えられるメリットがあります。より多くの筋肉を動員できるため、基礎代謝アップとシェイプアップを併用することもできます。
フリーウエイトトレーニングを行うことでリバウンドしにくいことも、ダイエット目的ではうれしいポイントでしょう。バーベルやダンベルを使用したトレーニングで、効率的に筋肉量を増やせるのが主な理由です。
筋肉量が増えると基礎代謝量も増えるため、痩せやすく太りにくい体質になります。そのため、トレーニング期間だけでなく、長期的なダイエットにも有効です。
反対に、有酸素運動や食事制限だけのダイエットは、リバウンドするリスクも高くなるため注意しましょう。
効果的なダイエットをするためには、基礎代謝アップとシェイプアップに適したセットの組み方をすることが重要です。
ダイエット目的の場合、やみくもに筋肥大を目指すのではなく、筋密度を高くすることで筋肉量を増やすことをおすすめします。そうすることで、スタイルを重視したダイエットが可能だからです。
そのためのトレーニングは、低負荷高回数が適しています。具体的には、1セット20回程度できる負荷に設定するとよいでしょう。1種目のセット数は2~3セットに設定します。
トレーニングの際は、基礎代謝を上げるために必要な大きな筋肉を使う種目からはじめましょう。順番を逆にすると、シェイプアップに必要な小さな筋肉群のパワーを使い切ってしまい、大きな筋肉の隅々まで刺激が伝わりません。理想としては、大胸筋の種目の後に二の腕の種目を行うとよいでしょう。
また、十分に疲労を回復させるため、トレーニングを行わない休みの日を入れることも大切です。
さらに、トレーニング日を決める際は、上半身の日と下半身の日に分けるなどして鍛える部位を分割すると、筋肉への高い刺激と疲労回復が両立できるでしょう。
次のような分割トレーニングがおすすめです。
ベンチプレス→ダンベルフライ→トライセプス・エクステンション→クランチ
サイドランジ→ブルガリアン・スクワット→ヒップリフト
初級者は、まずは少ない種目数でトレーニングしましょう。慣れてきたら、種目数を多くしたり負荷を上げたりしてください。
トレーニングの際は、スピードにも注意しましょう。動作が速すぎたり、反対に遅すぎたりすると、筋肉に狙った刺激を与えられないためです。
ダイエット目的の場合、リズミカルなスピードでトレーニングを行いましょう。たとえば、スクワットの場合、2秒で体を下ろし2秒で体を持ち上げることを繰り返します。
楽をしようと、重力に任せて体を下げるスピードを上げてしまうと、筋肉に十分な負荷を与えられません。反対に、しっかり負荷をかけようと動作を遅くしてもいけません。
たとえば、スクワットで体を下ろす時間を5秒に設定するなどしてスピードを遅くしてしまうと、負荷がかかりすぎてしまう恐れがあります。その結果、オーバートレーニングで疲労が取れなくなったり、筋肥大を起こしてボコボコとした体つきになったりするリスクがあるため注意しましょう。
効率的なダイエットのために必要な基礎代謝やトレーニング方法、セットの組み方などについて解説してきました。
食事や有酸素運動でダイエットを行う人は少なくありません。しかし、基礎代謝を上げて痩せやすく太りにくい体質にし、長期的なダイエットに成功するためには、フリーウエイトのメリットを生かした筋力トレーニングがおすすめです。
ただし、フォームやスピードなど、トレーニングの際に気をつけるべきことは多いため注意してください。間違ったトレーニングは、高いダイエット効果が見込めないだけでなく、理想のスタイルになれなかったりケガをしたりする恐れもあります。そのため、まずはトレーナー指導のもと、正確な方法で取り組むことが重要です。
ハコジム エグゼクティブトレーナー。パーソナルトレーナー養成校HUB校長。国家資格 柔道整復師。後進のトレーナーを教育する傍ら、自らも現場に立ち指導に取り組んでいる。