「脚や腕の筋肉は大きくなったけど、胸の筋肉がつきにくい…」このような悩みを持っている人は少なくありません。
大胸筋を中心とした胸の筋肉は、分厚くたくましい見た目にするため、そしてスポーツのパフォーマンス向上のためにたいへん重要な部位です。
そこで今回は、胸の筋肉がつきにくい人向けに原因や対処法、おすすめのトレーニング種目について解説していきます。
まずは、胸の筋肉がつきにくい原因とその対処法について説明します。
トレーニング全体の負荷(総負荷量)が不足している場合、筋肉が発達しにくいです。
総負荷量 とは、重量×回数×セット数のことです。胸を鍛える種目で重量と回数、セット数のいずれかが不足しているならば、対処法としてその内の1つ以上を増やす必要があります。
ただし筋肥大目的の場合は、短時間で強い負荷をかけるほうが筋肉が発達しやすいです。たとえばダンベルを使ったベンチプレスを10回3セット行う場合、最終セットでしっかり限界まで追い込める重量まで増やすことをおすすめします。
筋肥大のためには、筋肉が伸展した状態と収縮した状態でしっかり負荷をかけることが大切です。しかし、ストレッチポジションで負荷がかかってないケースは少なくありません。
たとえばダンベルフライの場合、正しいフォームでは腕を横に大きく広げてしっかり大胸筋をストレッチさせることが重要です。しかし、深さが足りなかったりあまり腕を広げずダンベルプレスのようになったりしていることがあります。
また、ストレッチ種目が苦手だから行っていないなどもあるでしょう。
そのため対処法としては、胸のトレーニングの際にストレッチ種目を必ず取り入れ、さらに正確なフォームで行うことが大切です。トレーニングの最初にストレッチ種目を行うこともたいへん効果的です。
毎回同じ種目や重量でトレーニングしている場合、筋肉は大きくなりにくいです。筋肉には、刺激が変化することで肥大する性質があるためです。
たとえば、胸のトレーニングでバーベルを使ったベンチプレスだけに特化している場合は、筋肉への刺激はほとんど変わりません。
そのため、ストレッチ種目のダンベルフライや角度を変えたインクラインダンベルプレスを取り入れるなど種目を追加して、バリエーションを増やすことがおすすめの対処法になります。また、同じ種目でも回数やインターバルを変えてトレーニング内容に変化をつけることもおすすめです。
トレーニング頻度が低い場合、胸の筋肉がつきにくいと感じることがあります。特に、筋肉量が少なく重い重量を扱えない初心者の段階で多いケースです。
負荷が少ないと筋肉への刺激が弱くなります。この状態でトレーニング頻度が低いと、筋線維の発達が促されません。筋肥大が起きる超回復のバランスが悪くなるためです。
この場合、筋トレの休養期間を見直すことが必要になります。週に2回は、筋肉をしっかり追い込んだトレーニングを行うようにしましょう。
トレーニング頻度が高すぎる、現在の筋力では取り扱えない重量に設定している、セット数が多すぎるなど、筋肉に過度に負担をかけている場合、オーバートレーニング症候群になる恐れがあります。
オーバートレーニングになると、トレーニング時のパフォーマンスが落ちたりストレスホルモンといわれるコルチゾールの分泌が多くなり筋肉が分解されやすくなってしまいます。その結果、筋肉がつきにくくなるだけでなく筋肉が小さくなってしまうという悪循環を引き起こす恐れがあります。
たとえば、はやく筋肉を大きくしたいという願望から、毎日トレーニングを行うことは避けてください。破壊された筋線維を十分に回復させるためには、筋トレの間隔を2~3日空けることが必要なためです。
最近重量が伸びないと感じている人も、オーバートレーニングになっていないか確認することをおすすめします。
また、高重量を扱える筋力になってからは、週に2回のトレーニングでも多い場合があります。その際は、4日に1回、5日に1回とペースを落として様子をみるようにしましょう。
体質によっても筋肉がつきにくい場合があります。
日本人の場合、筋肉が発達しにくいと言われています。また、胸の筋肉はなかなか大きくならないが脚の筋肉は大きくなりやすいなど、体質によっては筋肉がつきやすい、反対につきにくい部位もあります。
そのため、胸がつきにくいと感じる場合は、他の部位よりも様々な方向からアプローチすることが大切です。これまで説明してきたトレーニングの強度アップやストレッチ種目の積極採用、適正なトレーニング頻度などを確認してみましょう。
また、食事方法など栄養面でも見直してみることが大切です。特に、筋肉のもとになるたんぱく質の摂取量は十分か確認してください。
ここでは、大胸筋を中心とした胸の筋肉をスムーズに肥大させるためにおすすめのトレーニングメニューを紹介します。
ダンベルフライは胸のトレーニングで必ず取り入れたいストレッチ種目です。大胸筋の発達が思わしくない場合に有効な、ストレッチを重視した対策ができます。トレーニングの最初に行ってもよいでしょう。
ダンベルフライは次の手順で行ってください。
上記の動作を15~20回×3セット行いましょう。
ダンベルフライは、1セット15回以上できるような、やや軽めの重量で行うことをおすすめします。
関節への負担を小さくするため、ダンベルを下ろした際にヒジの角度が直角になるようにするとよいでしょう。
また、大胸筋をしっかりストレッチすることは大切ですが、肩関節への負担軽減や大胸筋が過度にストレッチされるのを防ぐため、ダンベルを下ろしすぎないことも大切です。ダンベルの高さは胸の位置程度で十分でしょう。
プレス種目でストレッチを重視する場合、バーベルよりもダンベルを使ったダンベルプレスがおすすめです。
バーベルは下ろした際に胸に当たるため、それ以上ストレッチできません。一方ダンベルを使った場合、大胸筋を十分にストレッチできます。
ダンベルプレスは次の手順で行ってください。
この動作を10~15回×3セット行いましょう。
ダンベルを下ろした際は、ダンベルフライのように腕を横に広げないように注意してください。
また、ダンベルを上げた際にダンベル同士が当たるようにすると、収縮ポジションでも筋肉にしっかり負荷を与えることができます。
インクラインダンベルプレスは、胸の上部の筋肉を鍛えることができる種目です。フラットだけではなく、角度をつけたトレーニングをすることで、大胸筋の発達を促すことができるでしょう。
インクラインダンベルプレスは次の手順で行ってください。
この動作を10~15回×3セット行いましょう。
ベンチの角度は、まずは45度に設定します。
インクラインダンベルプレスでは、胸の上部に負荷がかかることが重要です。そのため、肩に効いてしまうなど大胸筋上部に負荷を感じられない場合は、角度を調節してください。
またダンベルプレスと同様に、ダンベルを下ろした際に腕を横に大きく広げないことも大切です。
フライ系やプレス系種目は大胸筋を横方向に収縮する種目ですが、縦方向に収縮する種目を加えるとトレーニングに変化をつけることができます。そのためにおすすめの種目がダンベルプルオーバーです。
ダンベルプルオーバーは次の手順で行ってください。
上記の動作を15~20回×3セット行いましょう。
ダンベルプルオーバーはバランスがとりにくいため、トレーニングの際は足を広げて背中と足の裏でしっかり体を支えるようにしてください。また、ヒジは軽く曲げる程度にしましょう。
なおダンベルプルオーバーは、大胸筋の拮抗筋にあたる広背筋にも負荷をかけることができます。そのため、拮抗筋同士の筋肉の発達がより促されることになります。
肩まわりや肩甲骨まわりの柔軟性をアップさせると、より胸の筋肉の発達に効果的です。そのため、筋トレの補助として、トレーニングの前後に次のような簡単なストレッチを行うことをおすすめします。
この腕を回す動作をトレーニング前後に10回行いましょう。体が硬い場合は、お風呂上がりなど血流の良いときに追加で行っても効果的です。
胸の筋肉がつきにくい人向けに、対処法やおすすめトレーニングを説明してきました。
大胸筋を主とする胸の筋肉が発達しづらい原因は人それぞれのため、まずはしっかり原因を確認しましょう。そのうえで、トレーニングのやり方を工夫していくことが大切です。
トレーニングでは、大胸筋を十分に伸展させることや肩甲骨まわりの柔軟性を高めることが大切です。そのため、しっかりストレッチができるトレーニングを中心にメニューを組み立てるとよいでしょう。
理想の大胸筋を手に入れるため、ぜひ今回の方法を参考にトレーニングを続けてみてください。
ハコジム エグゼクティブトレーナー。パーソナルトレーナー養成校HUB校長。国家資格 柔道整復師。後進のトレーナーを教育する傍ら、自らも現場に立ち指導に取り組んでいる。