腹筋を効果的に鍛えるための「アブマット」。使い方によって、負荷を上げたり腹直筋や腹斜筋など部位別に集中的に鍛えたりすることができる便利なグッズです。
しかし、効果的で安全にトレーニングするためには、使う際に気をつけなければいけない点も少なくありません。
そこで今回は、アブマットを使ったトレーニングメニューや使用する際の注意点などについて解説していきます。
アブマットとは、主に腹筋を鍛えるため腰に沿った形に作られた器具です。
一般的な腹筋運動は、平らな床に仰向けになった状態で上体を起こしたり足を上げたりして行います。
しかし、このようなトレーニングでは腹筋に刺激がうまく伝わりません。腹筋を十分にストレッチできないためです。
その結果、筋肉を動かす範囲(可動域)が狭くなり、負荷の小さなトレーニングになってしまうのです。
アブマットを腰の下に敷いた場合、平らな床と違い腰が湾曲します。この状態で腹筋運動を行うと、腹筋を十分にストレッチができるため可動域が広くなります。
さらに、普段動かすことの少ない範囲に強い負荷を与えられます。そのためアブマットは、腹筋を効率的に鍛えるのにたいへん有効な器具と言えるのです。
ここでは、アブマットを使った具体的なトレーニングメニューについて解説していきます。
「クランチ」は、アブマットを使った基本の腹筋トレーニングです。みぞおちから下腹部にかけて存在する腹直筋全体に刺激を与えられますが、特に腹直筋上部に強い負荷をかけられる特徴があります。
クランチは次の手順で行いましょう。
この動作を20回3セット以上行ってください。
クランチでは、腹直筋にしっかり負荷をかけるため腹筋を意識してゆっくり行うことが大切です。
また、上体を起こす際に腰が完全に上がらないようにしましょう。腰がアブマットから離れるほど上体を起こしてしまうと、負荷が分散される他、腰を痛める恐れがあるためです。
クランチ中は、常に腹筋に負荷がかかっていることが重要です。そのため上体を下ろす際は、背中全体を床につけずに、肩甲骨が床につく直前で止めるようにしましょう。
なお、このやり方できついと感じる場合は、両手を腰や骨盤に当て負荷を下げて行ってください。反対に負荷が足りない場合は、頭の後ろに両手を当てて行いましょう。
アブマットを使った「サイドクランチ」は、腹筋の側面にある外腹斜筋や内腹斜筋、深層部にある腹横筋などを鍛えることができるトレーニング種目です。次の手順でサイドクランチを行ってください。
同様に、右側面を下にして行いましょう。左右20回2セットが目安です。
腹筋の深層部まで刺激を与えるためには、上体を起こす際に少しひねりを加えるとよいでしょう。上体をまっすぐ横に起こすのではなく、斜め上に向かって起こすようにすると刺激が伝わりやすくなります。
また、クランチと同様に腕の位置で負荷を調節することができます。
「リバースクランチ」は腹直筋下部を中心に、外腹斜筋と内腹斜筋も鍛えることができるトレーニングです。
次の手順でリバースクランチを行いましょう。
このトレーニングを、15回3セットを目安に行ってください。
リバースクランチで腹直筋下部にしっかり負荷を与えるためには、正確な動きをする必要があります。
足全体を大きく動かしたり腰をアブマットから離したりしてしまうと、負荷が逃げてしまいます。そのため、スタートポジションで腰が反った状態から、腹筋の収縮を利用してお尻だけを浮かせるようにするとよいでしょう。
なお、負荷が足りない場合は足首にウエイトを装着してください。
「エレクタークランチ」は、アブマットを利用して腰部にある脊柱起立筋を鍛えるためのトレーニングです。腹筋トレーニングのために開発されたアブマットですが、次のような手順で下背部も鍛えることができます。
このトレーニングを、20回3セットを目安に行ってください。
エレクタークランチは、下半身の安定性をキープすることが大切です。
上体を起こす際に足が浮いてしまう場合は、アブマットの位置が下半身寄りになっています。反対に、下半身は安定しているものの上体を起こしても脊柱起立筋に負荷を感じられない場合は、アブマットの位置が上半身寄りになっていると考えられます。
重量のバランスが崩れてしまうと、脊柱起立筋に十分に負荷を与えられません。そのため、安定して上体を上下できるようにアブマットの位置を調節してください。
また、筋力に自信がない場合は、上体を起こす際に両手で床を押してサポートするとよいでしょう。上級者の場合は、両手を床につけずに上体を起こし、脊柱起立筋が収縮した状態で2~3秒キープして負荷を上げるようにします。
アブマットを使うことで効果的にトレーニングができる反面、気をつけなければいけない点もあります。次のように、呼吸や動作に注意しましょう。
アブマットでのトレーニング中は、一定の呼吸を心がけましょう。筋肉を収縮する際に息を吐き、筋肉を緩める際に息を吸うのが基本です。
しかし、辛くなってくると息を止めたり呼吸を速くしたりするケースも少なくありません。呼吸が乱れると、筋肉への刺激が弱くなったり事故につながったりするため注意しましょう。
トレーニング中に勢いをつけないことも大切です。
アブマットを使用すると、筋肉が強くストレッチされた状態から動作が開始されます。その際に勢いをつけてしまうと、筋肉に過度な負荷がかかる他、筋肉を支える腱にも強い衝撃が加わってしまいケガをする恐れがあります。
疲れてくると反動をつける傾向にありますが、一定のリズムを守ることが大切です。筋肉を十分に収縮できなくなった場合は、勢いをつけずに可動域を狭くして続けましょう。
アブマットを使ったトレーニングでは、ケガを防ぐため必要以上に動きを大きくしないことも大切です。
アブマットを使用すると、平らな床の上で行う腹筋運動と比べて動きが小さく感じられます。しかし、体感では可動域を狭く感じても、アブマットを使うことによって効果的にストレッチから収縮への運動ができています。
つまり、動きが小さく感じても狙った筋肉に強い負荷をかけることができるため、まったく問題ありません。そのため、クランチで完全に上体を起こしたり、リバースクランチで膝が顔につくほど腰を上げたりするなど、必要以上に大きな動きをしないようにしましょう。
アブマットを使ったトレーニングメニューや使用する際の注意点について解説してきました。
アブマットは、腹筋トレーニングの際に腰の下に敷くだけで、筋肉への負荷を上げることができる便利な器具です。また、腰に負担がかかる動きが少ないためケガの予防にもなります。
ただし、効果的なトレーニングができる反面、使い方を誤ると急激な負荷がかかってしまう恐れがあります。そのため、一定のペースで行ったり反動を使ったりしないなど、使用方法には注意しましょう。
アブマットを使ったトレーニングを続けることで、引き締まった理想の腹筋が手に入れてください。
ハコジム エグゼクティブトレーナー。パーソナルトレーナー養成校HUB校長。国家資格 柔道整復師。後進のトレーナーを教育する傍ら、自らも現場に立ち指導に取り組んでいる。